ウェブ社会の思想 〈遍在する私〉をどう生きるか (NHKブックス)
- 作者: 鈴木謙介
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2007/05/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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よかった。先程風呂で読み終えた。
閉じたセカイを関係性によって開いていくのが本書で提示された処方箋だが、関係性と一口に言っても様々なものがある。意地悪な見方をすると「よい関係性」を選ぶことが<宿命>の内側に深く囚われた人に可能なのか、ものすごく時間がかかるのではないかという疑問が出てくる。
たとえ島宇宙的なセカイを脱する途上にある人が多くとも、総体として脱しきれていないものが多数派ならば問題は起こるような気がする。
じっさい、本書の終盤で登場した「大きな物語」の欠如によって起こるとされる社会的な危機は、昨年あたりから実際に萌芽を出しているものにもみえる。
また、「よい関係性を作るための制度を備えたシステム」によって関係性すらGoogleのような数学的民主主義の対象にならないのか。昨今のSNSはそれを志向している可能性はないのか。
関係性すら対象とする制度設計によってひとびとの成長が促されるなら、それはそれでよいことなのだろうか。ここに<宿命>の閉じた構造、あるいは別の問題があるかどうかはよく検討すると面白いかもしれない。