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読書日記:漢字と日本人

 

漢字と日本人 (文春新書)

漢字と日本人 (文春新書)

 
「漢字と日本人」を読んだ。
 うまく言語化しきれないが、「漢字は漢族のための文字である」という事実を背骨として漢字とのつきあいの歴史、戦後漢字改変という愚行を経てこれからどうしていくのがよさそうかを俯瞰している。めちゃくちゃおもしろいので、オススメです。
 橋爪大三郎もそうなのですが、教養が極まった人物の本は内容の高度さにかかわらず読みやすさが抜群で、そして視点がバランス感覚にすぐれている。
 今回の「漢字と日本人」は書店の物理棚を線形探索して見つけたのだが、よいセレンディピティであった。本はイラストと違って腰をすえて読んでみないと内容の評価ができない。それゆえに読書は博打の側面がある。橋爪氏の「正しい本の読み方」でも述べられていたが、読むときめたら素直な視点で最後まで読むのがよいだろう。バイアスのない視点が大事なのはデッサンでもコーディングと同様である*1
 この本は新書であるが、やはり新書だからといって質がわるいこともないようである。本の出版は時代と著者、編集者、市場が複雑に関係しているものなので、ある出版社や本のジャンルを挙げてラベルをはりつけても意味がない。今後も、書棚を線形探索しておもしろブックを見つけていきたい。

*1:もっともよくあるのが、「そんなことは知っている」のバイアスだと思ってます。そしてかなり有害。