6/29(土)
台所の棚に鎮座するスパム缶が気になっていた。たしか災害備蓄用品として買って賞味期限が切れたときに出しておいたもの。冷蔵庫の肉がない時に使おうと思っていたのに、いざ肉がなくなったらその存在を忘れてスーパーへ買いに行くのだった。それを繰り返して数ヶ月。今日は二日連続で「スパムを使えなかった!」と思っていたので、ようやく開封することができた。
メニューはパスタ。オリーブオイル、ニンニク、玉ねぎ、にんじん、キャベツを細かく刻んでスパムとともに炒め、ケチャップで和えたもの。ナポリタンのソーセージの代わりにスパムを入れたものなので、当然成立する。ソーセージにはない強い旨みがあっておいしかった。
深夜、今度はスープに入れてみた。夜中に突然スープを作ることがあり、今日がその日だった。野菜を手の上で切ってスパムの残り、塩、胡椒を入れて煮込む。これもまたうまい。なかなか便利な缶詰だと思った。でも、また使うのを忘れて棚に残ったままになるのだと思う。それが缶詰だから。
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『村上さんのところ』を読んだ。村上春樹がメールを受け付けてレスをくれるかもしれないサービスがこれまでに何度か開催されていたらしい。村上主義者(ハルキストと言ってはならない)のお祭りみたいなものだ。村上春樹は集まったメール三万通すべてに目を通し、三千通にレスを返したそうだ。その中の約五百通を選んで収録したのがこの本。厳選されているので、どのやりとりもおもしろかったのだが、特に気に入ったのが次の二つのレスだった。
いつも言っていることなんですが、小説には意味なんてそんなにありません。というか、意味という座標軸でとらえることができないからこそ、小説が有効に機能するのです。意味という座標軸でとらえてしまうと、小説は味気ないつまらないものになってしまいます。物語の足がとまってしまいます。「意味はようわからんけど、なんかおもろいし、読んだあと腹にたまるんや」(なぜか関西弁になる)というのが僕の考える小説の理想のかたちです。
p.73僕はこうして文章を書いて35年も生活していますが、身にしみて学んだのは「言葉って本当に怖い」ということです。ペンは剣よりも強いとよく言いますが、言葉は実際にナイフのように人を切り裂きます。だから僕は慎重に慎重をかさねて文章を書いています。こういうやりとりも、いい加減にほいほい書いているように見えるかもしれませんが、これでずいぶん神経をつかって書いているし、何日か寝かせて、用心に用心を重ねています。僕はなんといっても言葉のプロですから、失敗は許されません。
でも世間の多くの人は、言葉の怖さをよくわかっていないように見受けられます。そしてSNSが発達したせいで、抜き身の刃物のような言葉が言説空間をひゅんひゅん飛び交っています。これは僕なんかから見るとほんとうにとんでもないことです。あなたが傷ついたり、いやになったりする気持ちはよくわかります。そう感じるのがむしろ当然です。インターネットは便利なツールですが、僕らはなんだかとんでもないものを解き放ってしまったような気がすることもあります。
しかしいずれにせよもう後戻りはできないので、そのような状況にあわせて自分を護っていくしかありません。そういうツールとの間に、自分なりの「適正距離」を測っておくことが大事になります。うまく測ってください。
p.399
6/30(日)
ブルーバックスの『東洋医学はなぜ効くのか』を読んだ。東洋医学とは漢方とか鍼灸のこと。内科でふつうに漢方薬が処方されるように、医学の世界では東洋医学が併用されつつある。それも根拠がないことではなく、ちゃんと作用機序が明らかにされてきているらしい。東洋医学の仕組みを調べる論文がどんどん増えているのだとか。私は鍼の効果を隔週で体験しているので疑問に思ったことはないのだが、世間を説得するには科学のお墨付きが必要だ。そのための本である。
注意が必要なのは「東洋医学すべてのメカニズムが明らかにされているのではなく、一部の生薬やツボ、鍼灸の作用機序がわかってきた」ということ。「どうやら本当に効くらしい」にはなりつつあるけれども、東洋医学のすべてを信用して良いわけではない。西洋医者に信用できないものがいるのと同様に、鍼灸師にも腕の良いものと悪いものがいる。すべてを信頼するのではなく、自分の身体で実験して効果があったものだけ信用するのがよろしい。実験というと物騒だが、ツボ押しとかお灸程度ならば害なく実験できる。漢方薬はもとより医師の処方が必要なので保険医療に従っていればよろしい(ドラッグストアで買える漢方薬は有効成分の量が少ない)。
特にツボ押しはおすすめできる。ツボと言われている部位の近くの、痛気持ちいいところをゆっくりマッサージしていると止まっていた胃腸が動き出したりする。
7/1(月)
星野源、アルファと恐山の鼎談を読んだ。そんなにおもしろいコンテンツという感じはしなかったが、恐山の日記noteが紹介されていて加入した。毎日書かれる日記が好物。日記だとそんなにおもしろくなくても許せるのが不思議だ。流れていくものだからだろうか。「人が生きてるな〜」という観測をするためのものかもしれない。
🥩🥩🥩
妻氏が突然ムジーナの絵文字を連打してきた。これまでムジーナのスタンプばかり送りあっていたのだが、絵文字も使えるようになった。我が家のLINEのやりとりはムジーナだけで完結する時代に。
Tシャツもおすすめ。
ちなみにムジーナの作者のくまみねさんは、現場猫の作者でもある。
7/2(火)
ダンジョン飯を最後まで読んだ。いつだったかタイムラインで「マルシルとライオスが結婚する」という情報を見て「ホントかな?」と思い調べに行った。
オタク女子コミュニティの集団幻覚だった。
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妻氏は私が漫画を読むさまをみて「ページをめくるのが早い。絵を見ていない」と評していた。見てないことはないがあまり見ていない。九井諒子の絵が上手いことはわかるし、もし漫画が白紙のセリフだけだと読めないだろうから情報は拾っている。しかし絵を楽しんでいる度は限りなく低く、ただの読みやすい物語として消費しているようだ。だから私にとって漫画はけっこうコスパが悪い。文字が多い漫画ならいいけど。
次に読むのは『ラーメン発見伝』と決めているのだけども、Vision Proを買ってしまったので節制して電子書籍ぽちぽちを我慢している。
7/3(水)
味噌汁に煮干しやわかめ、昆布などの乾物を入れることがあるのだが、管理が面倒になって一つのタッパーに入れるようになった。煮干しを買ってきたら中身をタッパーにぶちまけておしまい。使う時はガサガサ拾って鍋にポイポイする。なかなか便利なのでおすすめだが、雑人間向けかも。私は雑人間です。
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CO2濃度計が届いた。換気扇を止めてどこまで上がるのか実験。
すると4時間くらいで1000ppmを超えてしまった。健康的な値は400ppm〜600ppmくらいだと言われている。私は900ppmくらいで頭痛がし始めた。なぜこうなるのかというと、我が家の気密が良すぎるから。家主が内窓を余計に入れているのに建物は古くて24時間換気のための換気口がないのである。
細かく窓を開けるか、換気扇を強めてドアの下の隙間から吸気するしかない。そのために、とりあえずCO2濃度の監視をすることにした。
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久しぶりの趣味プログラミングである。プログラミングは私にとって飯を食うための手段でしかないので、あまりプライベートではコードを書かない。アウトライナーを自作するとか、窒息しないためだとか、差し迫った需要があると重い腰をあげる。
今回作るのはCO2センサーの値を読みとって監視サービス(mackerelなど)に投げるだけのスクリプト。仕組みはよく知らないがUSB経由で無限にバイナリが読めるので、それを適切に解釈するとCO2濃度や気温が取れる。取れた値をインターネットに投げ、監視サービスでアラート閾値を設定したら完成だ。かんたん。
インターネットの参考実装はPythonだったので最初はPythonを使おうとしたのだが、なぜかNAS上では動かなかったし言語があんまり好きじゃないのでGo言語に切り替えた。学生時代はPythonもよく書いていたのだが、仕事をしていくうちにRubyとGoの人になってしまった。TypeScriptも嫌いじゃないよ。
こうしてできたのがこんなやつ。とりあえずデータは読めるようになった。あとは投げるだけだ。
7/4(木)
Apple Vision Proを受けとった。鍼むしろにされ、残業をして家事をこなしたあとにセットアップ。空間コンピューティング生活が始まった。
アプリはまだ対応しているものが少ないのだが、すでに生活が変わりつつある。際立っているのは画像がかなり綺麗に見えること。これまで触ってきたどんなディスプレイよりも画像、映像が綺麗に見える*1。そのせいで、DPZ記事とかtumblr、XはVision Proで見る、という行動変容があった。また、電子書籍の雑誌や料理本などの大型本が読みやすくなった。Vision Proでは150インチモニタ相当(てきとうだがかなりでかい)の大きさでアプリを表示できる。タブレットだと読みにくかった細かい本も読めるようになった。
重さはどうか。それなりに重いのだが、正しく装着したら気にならなくなる。今のところ二時間くらいは連続で使えている。バッテリーが二時間しかもたないので実質上限。Xやこれまでみてきたニュースによると「痛くてつけてられない」という声があるのだけども、それはちゃんとマニュアルを読んで装着してないからだと思う。ヒントアプリにちゃんと書いてあるので読みましょう。あるいは姿勢が悪くて首を痛める人もいるかもしれないが、これはどうしようもないか。姿勢はよくしましょう。Vision Pro関係なしに。
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難点はIMEの挙動が変なこと。ハードウェアキーボードを接続して文字入力をしているとBackspaceが二回効くような動作をすることがあった。バグだと思う。
7/5(金)
CO2監視スクリプトをNAS(自宅用のストレージサーバーです)で動かそうと試みたがなぜかクロスコンパイルができないので諦めた。NASは一応ちゃんとしたサーバーなのだがCPUとかOSが特殊なのであんまり触りたくない。というわけで、諦めてラズパイを買った。ラズパイは特殊なCPUだと言えないこともないが、あまりに普及しているので自作のプログラムを動かすにはピッタリの環境なのだ。
問題はラズパイの4とか5がオーバースペックなこと。一万円以上するし、メモリも無駄に4GBとか積んでいる。世の中にはデジタルサイネージとかでラズパイを使う人がいるので、メモリがそれなりにいるらしい。しかし私の用途だとそんなにいらない。自作スクリプトのバイナリサイズは2.1MBだし使用メモリは4.6MBだった。しょぼいメモリでいいので良いのないかな〜と思ってサークルのSlackで質問してみたら、ラズパイには3のModel A+というしょぼしょぼメモリバージョンがあるという。価格も五千円程度で安価。これにした。
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『呼吸の科学』を読んでいたら「酸素摂取量で消費エネルギー量が計算できる」と書かれていた。また、先日のCO2濃度計の計測によると「妻氏は体格のわりに二酸化炭素を多めに出しているが、私一人だとぜんぜん濃度が上昇しない」ということがわかった。
私の呼吸が下手すぎることが判明。呼吸上手になりたい。