しゅみは人間の分析です

いらんことばかり考えます

本はおもしろければよい

おもしろい本を探したい

本を読むのが好きだ。だが、なかなかおもしろい本にはめぐり逢えない。九割くらいは「つまんないなー」となる本で、残りの一割を探すために読んでいる。最初の数ページでダメだとわかることもあるし、半分読んだところで雲行きが怪しくなる本もある。おもしろい本は読んでいて夢中になり、続きが気になってしまう。読後感もよい。

長く読書を趣味にしているが、本探しには失敗し続けてきた。できればヒット率を三割くらいにしてみたい。そこで、おもしろい本を探すにはどうしたらいいか、そもそもおもしろい本はどういう本なのかを考えてみた。

内容とサービスが充実した本はおもしろい

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考えた結果、図のような仮説がでてきた。内容とサービスでだいたいの本が評価できて、両方揃っているとおもしろい本になる。以下ではそれぞれの評価軸について詳しく述べる。

内容とは読んで得られる知識のことだ。内容=新しい知識は多いほうがよい。ただし興味がない本から知識は得られない。興味がなければ目が滑り読む端から忘れてゆくものだ。本を読む動機は何よりもまず興味である*1

サービスがよい本とは「読者が楽に読める本」のことである。サービスが悪い本は読みづらく、話がどこへ転がってゆくか見通せないものである。また、筋だけでなく著者の態度もサービスに関わる。行き過ぎた自慢や説教は読者を不快にさせる。読者のことを慮ってよく伝わるように、そして素直な態度で語るのがよいサービスである。サービスがよければ読者は自然に没入して内容に集中できるのである。

おもしろい本は内容があってサービスがよい。わかりやすく、たくさんの知識を授けてくれる。つまり読書として効率がよい。そして楽しい。グラフの右上にいくほど傑作になりやすい。人生の宝物にする本もここから出てくるだろう。

だが、内容とサービスがよくても万人に読めるわけではないことを注意しておこう。どんな本でも読者のレベルを想定して書くもので、何かしらの前提知識は必要だ。小学生に大学生向けの講義はできない。

読書というコミュニケーション

そもそも読書とは学校の授業のようなものである。教壇の先生が生徒=読者に向かって話すコミュニケーションだ。一方通行のお話だから、先生=著者のトークスキルがいる。わかりやすく、退屈させないように、そして全体像がわかるように話してくれるのが理想だ。

ただしコミュニケーションには相性がある。学校の先生に何を言ってもおもしろい人がいただろう。自分にとってはおもしろいのに、それをつまらなさそうに聞いている人もいる。相性が合う人の話はずっと聞いていられるし、合わない人の話は聞くに堪えない。

どんな本でも著者の性格が見えてしまう。論文のような固い文章でも著者の性格が伝わり、相性の問題が顔を出してしまうのだ。だから、世間でおもしろいとされる本でも相性が悪ければ読めない。自分にとってのおもしろい本とは、著者との相性がよくて、かつ内容とサービスが充実しているものである。

逆に、内容がなくて相性とサービスだけで売る本がエッセイである。エッセイは語る内容はなんでもよくて、サービスと語り口が大事である。極端に言うと、著者の性格だけで本ができている*2

おもしろい本を当てられるのか?

内容、サービス、人柄で本を評価できることがわかった。では、この観点で立ち読みをしたらおもしろい本を当てられるのだろうか?

そううまくはいかない。もちろん質の低い本は弾ける。説明が下手な本、文章が下手な本は序章を読めばわかる。それでも少し読んだくらいではどうにもならないのが本の難しいところである。タイトルに惹かれて最後まで読んでも、本当に知りたかったことが書かれていないことは多い。著者の能力不足なこともあるし、著者と読者が違う方向を見ていることがよくある*3*4

というわけで、読書は審美眼があっても宝探しになってしまう。上記の評価方法で一割の当たりを二割にできるかもしれないが、それより大事なのは見切りをつけることだろう。お金を出して本を買い、最後まで読まないのは惜しいが、それよりも時間のほうが大事だ。内容がない、サービスが悪いと思ったらその本を読むときではないのだ。すぐに本を閉じて棚にしまうべきである。よっぽど合わない本だと思ったならば売ればいい。

それでも宝を探してしまう

読書はそんなお金を浪費する趣味でいいのか?いいのである。そもそも人生は暇で仕方がないし、おもしろい本を読む喜びは格別である。おもしろい本には、他のどんな娯楽にも負けない快楽がある。例えるならば、親しい友人と夜通しお喋りをするような楽しさだろうか。楽しくて、かつ知識や新しい視点も得られる。なので、読書という趣味はやめられない。

余談: 内容とサービスは書物以外にも当てはまる

内容とサービスを言い換えると、「退屈しないか」「UI/UXがよいか」という評価基準になる。これは映画やゲーム、漫画にも当てはまる。漫画で説明すると、漫画のサービスはコマ割りとめくりの工夫、台詞の少なさである*5。いい漫画もサービスが大事で、読者に負担をかけないよう読ませるものである。これはすでに言い尽くされたポイントだとは思うが。

 

 

*1:自分の興味がわからない、何にも興味がないという人はサービスのよいナントカ入門を読むと興味探しができます

*2:人生の切り売りになっているので飽きられるのも早いことがある

*3:つまり興味とは向いている方向が大事である

*4:読者が自分の向いている方向をわかってないこともよくあり、まさにこれがおもしろい本に逢えない理由である

*5:キャラも大事だがキャラとはなんなんでしょうね