はじめに
この一年半の在宅勤務で使ってきた料理の知恵を挙げてみます。
使うのはガス火と雪平鍋、中華鍋です*1。
いま流行の時短調理といえばホットクックが挙げられるでしょうが、私はホットクックを試した上で使わないようになりました。予定を立ててそのとおりに行動するのが嫌だからです。また、保温によって味も悪くなります。つくりおきも同様の理由でやめました。
それよりも、道具と工夫で20分で調理が終わる方向を目指しています。そのときの必要と気分に従って料理をして、すばやく終わらせるほうが生活が自由だと思うのです。
道具
料理で大事なのは食材に火を入れることです。サラダや刺身は例外であり、ふだん食べる料理にはどれも火が入っています。
食材に火を入れるのは時間がかかりますが、ちゃんと火が入っていないとまずくて悲しくなります。
だから、すばやく火を入れることを目的にして道具を選びます。
すぐにお湯が沸く鍋
煮物は鍋のスペックが大事です。スペックといっても熱伝導率だけの問題ではなさそうです。
いま使っているのはこの商品なのですが、ステンレス製なのに水が湧くのは早いです。おそらく鍋の形によって対流の効率が変わってくるのでしょう。
最高級の鍋と言えば銅の雪平鍋ですが、銅製品のメンテナンスはたいへんなのでステンレス製の鍋を探すのがよいと思われます。食洗機に入るものを選ぶとよいでしょう。
ちなみに、この鍋は食洗機非対応です。ミスりました。おすすめの鍋ではありますが、手で洗いたくない人たちは他のものを探してください。
中華鍋(鉄鍋)
鉄鍋の加熱の速さは説明するまでもないでしょう。
鉄鍋といえば油を塗る面倒なものでしたが、さいきんは錆びにくい鉄鍋があります。使ったあと洗って乾かしておけば錆びません。
また、鉄鍋は洗うのも楽です。ササラかタワシでこすって流せば終わりなので、30秒から1分あればじゅうぶんです。
電気ポット
いつでも熱湯が出てくるすばらしい機械です。
上記の鍋に熱湯を入れて煮物を作り始めたら最高効率が狙えます。
カップ麺や白湯、茶、コーヒーなど使いどころはいくらでもあります。ケトルと違って冷めないのが便利なのです。
よく切れるペティナイフ
野菜の切り方によって加熱の効率が変わります。切れ味のよいペティナイフを用意しましょう。13cmから15cmの刃渡りがおすすめです。
たいていの野菜はこの刃渡りで切れること、まな板なしで野菜を切るのに小さいナイフが向いているのが理由です。
技術
この節ではすばやく怠惰においしい料理を作ることを目標にします。
そのうえで、練習しないといけないこと、身につけないといけないことはあります。土井善晴氏は料理動画で「こんなん数ですわ」と言っていました。数をこなしましょう。
味見
時短調理はしたいものですが、まずくなっては意味がありません。そのために味見が必要です。
味見ができると調味料は目分量でもよくなります。入れすぎなければまず失敗しません。保守的な量を入れておいて、味見をしてから調整します。
手順に従って再現性のある料理しかしたくない、曖昧さに耐えられないという性格の人がいるのも存じております。
ですが、体調、具材の組み合わせなどによって味は変わります。材料の側も食べる側もいつも同じなわけがありません。味が主観であることを受けいれ、味見をすることでそのとき食べたい味に調整しましょう。
まな板を使わずに野菜を切る
野菜は空中で切りましょう。調理の面倒さが軽減できます。加熱前の工程がナイフと野菜を持ってきて切るだけになります。
野菜ぜんぶこうやって切る pic.twitter.com/qawU7DvL8U
— ぴんくふわねこ (@non_117) 2021年12月25日
こんな感じです。よほど野菜が小さくならない限りなんでも空中で切れます。
注意点は刃の行き先に指を持っていかないこと、硬い野菜は切り方に気をつけること。特に人参が問題になります。切るのが少し難しいのに、大きく切ると火が入りにくくなります。煮る場合は問題になりませんが、炒め物は薄く切る必要があります。慣れないうちはゆっくりナイフを動かしたら大丈夫です。
ですが、こんなナイフの使い方は苦手だという方もいるとは思います。その場合は調理用ハサミを使いましょう。硬くない野菜ならだいたい切れるはずです。硬い野菜は諦めましょう。
たぶんナイフが苦手な人はまな板で切るのも怖いのでは?葉物野菜ばかり食べても健康は維持できると思います。柔らかい野菜をハサミで切るのです。
また、硬い野菜をまとめて切っておく方法もあります。詳細はこの記事のとおりです。硬い野菜ならば切ったあとでも保存が効くので葉物の空中切りと組み合わせるとよいでしょう。
味付け
塩味
塩加減はいちばん大事です。味見をする主目的は塩加減の調整です。塩が多くても足りなくても料理はまずく感じられます。どんな塩分源でもいいので足りない場合は足しましょう。
旨味
旨味を補う方法はいくつかあります。発酵食品を使う、メイラード反応を起こす、油を入れる、肉や骨などの出汁の出る食材から抽出する、トマトを入れる、旨味調味料。
メイラード反応は炒め物をこちょこちょいじり回さなければ勝手に起きます。焦げ目がつくように、ひっくり返さず放置するのが大事です。
煮物は(骨つき)肉を長時間煮こめばおいしくなります。ポトフやラーメンが例ですね。ですが、時間がかかるので発酵食品を使うのがよいです。お手軽さでいうと味噌は最強です。
トマトには味噌に匹敵する手軽さがあります。煮物にも炒め物にも使えます。やばい野菜ですね。
旨味調味料は便利ですが、我々は食べ飽きているのでつまらない味になります。使う場合は純粋なグルタミン酸ナトリウムよりも、鶏ガラ顆粒とかコンソメ顆粒がよいと思います。食べ飽きている割には複雑な味にできます。
常備するもの
食材調達の話です。消費期限の短い食材を買ってしまうと、食材に振り回されて料理が面倒になります。できる限り日持ちのするものを買います。また、火の入りやすさも大事です。
野菜
冷蔵庫のスペックにも拠りますが、キャベツ、人参、玉ねぎ、ピーマンは日持ちします。野菜をタッパーに移し替えるのもよいでしょう。乾燥させると野菜はしなしなになります。密閉して保存するのが大事です。
どの野菜がいちばん手軽なのでしょうか?キャベツがよいでしょう。キャベツは手でちぎれますし、火の通りも早いです。胃腸のメンテナンスにも使えます。
肉
薄切りの豚肉が最強です。火が通りやすいからです。煮物の場合はカット済みの鶏肉でも大丈夫ですが、沸騰したあと5分くらいは煮る必要があります。薄切り豚肉は沸騰したあとしゃぶしゃぶをするように泳がせたら火が入ります。
肉はどうしても消費期限が短いものなので、こまめに買う、冷凍する、消費期限を無視してよく火を通す、のどれかの対策が必要です。
炭水化物
個人的にはこれが一番悩ましい食材です。私もいろいろ試してきました。ビーフン、焼きそば、うどん、白米、タイ米、パスタなど。
炭水化物は時短調理がそもそも難しいのです。たいてい火が入りにくく、その場で調理するのに向いていません。
袋入りのうどんやそばもありますが、量が決まっていて体調に応じて調整するのが難しくなります。野菜と肉はふつうに食べるが、炭水化物は控えめにしたいときもあるのです。
有力なのはビーフンでした。すぐに火が入ります。ビーフンは電気ポットのお湯で戻して中華鍋に放りこむとおいしく食べられます。
ですが、私はあまり好きではなかったようです。やっぱりお米がよい。しかし米を高頻度に炊くのはたいへんです。たとえタッパー保存を活用しても、米を炊くことそれ自体が面倒ではあります。パックご飯は袋入り麺と同じく量の調整の問題があります。
いま活路を見出しているのはタイ米です。電気ポットのお湯で火を入れておき、中華鍋で加熱すればいけるのでは……!と考えて実験をしています。
まとめ
以上が在宅勤務のお昼ごはんを作るうえで見つけてきた知見です。けっこう高速化・省力化はできました。今は気分に従って好きなものを作れます。ですが、まだまだ高速化の余地はあると考えています。また何か見つけ次第報告します。
補足: この方法で平日に作れるレシピには限りがある
たいていの調理に有効な技術ではありますが、ハンバーグや餃子、カレー、シチューなどを20分で作れるようにはなりません。
ですが、それでも20分で作れる料理は多いです。例えば、インドカレーはレシピが単純なので平日でも作れます。複雑な工程が必要な料理はどうやっても時短ができないのです。
なので、手間のかかるハレの日の料理は土日に時間をかけて作るべきで、平日は20分で作れるレシピでじゅうぶんだと思っています。
*1:中華鍋以外はIH熱源でも使える話です