先日自分がアファンタジアであるのに気づきました。アファンタジアとは脳内でイメージ映像を思い浮かべられない認知特性のことです。小説を読んでも情景は映像化できませんし、動画を観たあとに光景が焼きつくこともありません。過去の体験を振りかえっても映像はなく、頭の中には言葉(概念)だけがあります。説明しろと言われたら言葉で説明できますが、頭の中にあるのは「イメージ」ではありません。
アファンタジアはAphantasiaと綴り、phantasiaに否定の接頭辞a-をつけた造語です。目を閉じて親や友人の顔を思い浮かべられる人たちはphantasiaと言えます。
アファンタジアは2015年に発見されたそうです。映像記憶ができない人そのものは百年以上前に報告されていますが、認知特性として定義され研究され始めたのはここ数年の出来事のようです。なぜこれまで見つからなかったのか?たぶん、ASDやADHDほど困っていないから、見かけからわかりにくいからだと思われます。
FAQ
生まれつき?
はい。おそらく。幼少期より眠れないときは羊ではなく数を数えていました。phantasiaであれば羊が柵を飛びこえるシーンを想像するそうですが、そんなことはできません。
映像がないなら何があるの?
言語(概念)があります。音楽は稀に再生できます。どの感覚が抜け落ちているかは人によって違いがあるようです。
言語ってなんやねん、と思われるでしょうがこれ以上の説明はありません。強いてたとえるなら、無意識のほうから言葉が勝手に出てくるというか……。ただ概念と言うのが正確です。
困っていないの?
短期記憶はたいへん弱いです。レシピに書かれた醤油の量を覚えられないし、二段階認証の数字を覚えるのも苦手です。飲食店でお客さんの注文を覚えるような職業には向いてないでしょう。
ですが、文字は書いておけば消えないのでたいていのデスクワークでは困りません。メモができれば大丈夫です。
映像コンテンツが楽しくないという悩みはあります。傑作を映画館で観るときすら暇に感じることがあるので本当に向いてないのだなと諦めています。映像コンテンツは映像ではなく台詞を追って消費しています。
ほとんどのコンテンツはphantasiaであることを前提に作られており、私向けの娯楽は少ないです。いつも人生が暇だと思っています。
逆に得することは?
短期記憶は壊滅的ですが、なぜか記憶違いや記憶の改変をすることは少ないです。これはアファンタジアを使った実験でも示唆されている傾向のようです。
一度理解をしてしまえば確実に再現できるので、深い理解になるまで考え続ける作戦でワーキングメモリ不足に対処しています。
また、映像ではなく言語で考えるからなのか、プログラミングや設計が得意です。あと整理整頓も得意ですね。
どうやって気づいたの?
もともとphantasiaらしき人と喋ると違和感はありました。
さほど困ることはなく暮らしてきたある日、妻氏が画像を丸ごと記憶できるのを知りました。そんなの特殊ケースだろうと思っていたのですが、ふつうの人も画像を思い浮かべられることに気づき、自分がアファンタジアだと認識しました。一ヶ月くらい前のことです。
夢はどうなの?
正直なところよくわからないです。夢でわけのわからない出来事は起こりますが、短期記憶が破滅しているのでそれが映像だったかどうかよくわからないです。
こう書いている時点で映像ではない、と言えるのかもしれません。
ですが、幼少期には映像つきの夢があったような覚えがあります。4歳か5歳のころ、自分のお腹に人面瘡ができて喋る夢を見ました。そのときたいへん恐ろしい思いをしたので、それはビビッドな映像だったのかもしれません。
言語および自我、脳構造の発達によって夢の構造が変わるのでしょうか。
発達障害とは違うの?
併発している人もいるでしょうが、別の認知特性ではないでしょうか。研究が進むと関連が明らかになるかもしれませんが。
知能検査を受けたりメンタルクリニックに相談したことはないので、自分がどういう発達傾向なのかはわかりません。ですが、ASDよりはADHDに近い特性だとは自認しています。とはいえ薬がほしいと思うほど困ったことは起きていないので、「どちらかというとxxに近い」と主張しておきます。
絵は描けるの?
模写はできます。ですが、想像したものを描くのは苦手です。
例えばこんな図を描いたことがあります。
左が私の描いたもので、右が妻氏の描いたものです。左の案をもとに右の絵が描かれました。京都タワーを描いたつもりなのに鉄塔になっていたり、ピーマンらしき謎の物体が描かれています。
このように、絵?と言いたくなるようなものを描きます。これしか描けません。絵というか記号だと思います。
「めんだこちゃんが巨大化してUFOのようにいろいろ吸い込んでいるとおもしろいだろうなあ」と思って左図を描きました。